(清水歴史探訪より)
「須弥山(しゅみせん)思想の大事なところ、これはとてもアジア的といいますか、この日本人の持っている人間性にとても大きく影響しているところなんですけれども、天動説というのが、普通はですね、『自分を中心として、自分の周りを太陽と月が回っていく』という考え方なんですね。ただ、この須弥山(しゅみせん)思想、自分も中心ではなく、『神様・仏様を中心としてその周りを太陽と月が回っていく』と。私たちは辺境の地ですね、金輪に近い一番すみっこのところで神様・仏様に見守られながら、太陽と月の恵みをいただいている、という世界観になっていきます。」
(清水歴史探訪より)
「ちょうどその金輪という一番外側の部分が、直径1メートル近くもありましょうか。これ、かなり大きいですよね。」
「そうですね、大きいですね。」
「その真ん中に四角く、これが地面の部分になるんでしょうか。」
「はい。」
「真ん中の部分にいくつかこう、山のようなものが並んで。中央に四角錐が上から出ているものと、上からひっくり返しになったものが合わさったような形で。この上に、仏様、神様がいらっしゃるという。」
「はい。」
「そういう形になっているわけですね。」
それで、その上にはですね、上のレールのところには、真ん丸の太陽が乗っかっています。下のレールのところには円盤状、コインのような形のお月様が乗っています。
それで、須弥山(しゅみせん)の向こう側に隠れていくと、日が沈んでいく、お月様が隠れていくと。
須弥山(しゅみせん)の手前からですね、出てくればお日様が昇っていくし、お月様が出てくると。
太陽は真ん丸なので、どこの角度に来ても真ん丸なまんまなんですけれども、お月様はコインの形をしているので、角度によっては欠けていくという考え方ですね。
当然、夏と冬ではですね、日の長さが変わっていきます。ここにそのレールを支える台みたいなものがございまして、そこにはですね、冬至とか夏至とか、大寒とかという、暦が書かれているんですね。ですから、この時期によって軸を変えることによってですね、太陽と月の軌道、日の長さも変えられるようになっています。
お日さんと月はですね、両方とも1日に1回転ですね。それから3面体になっています、十二宮も1日に1回転します。それから、二十八宿の7面体もですね、1日に1回転しています。」
「はい。時間を合わせておけば、天の動きと同じように動いてくれるわけですか。」
「そうですね、それを目指して作られていったものになります。」
「中のメカニズムというのは、材質はやはり金属なんですか。」
「歯車に関しては、金属で作られています。その他の部分はすべて木造で作られています。棒天府(ぼうてんふ)というものがありまして、重石(おもし)のものですから、ずんずんずん下がっていってしまうわけですね。それを振り子のようなものを利用して時を刻む。タイミングを合わせていくわけですね。」
「このあたりは、時計と全く同じですね。」
「そうですね。そのメカニズムで作られているようです。」
(清水歴史探訪より)
「現在は、動くことはできるんでしょうか。」
「残念ながら、今は動きません。ないパーツがいくつかありまして、今のところは、この状態で保っているところです。当時の科学としてもかなり技術的にもすばらしい、高いレベルのものですし、ここの寺に収められている須弥山(しゅみせん)が一番古い時代のものになります。初期型なんですね。これではうまく説明できなかった現象を、また次の須弥山(しゅみせん)の時に改良を加えていって再現できるようにしていったんですね。全国で現存しているものとしては、7台ほど残っていると言われております。」
「龍津寺(りょうしんじ)にある1台というのは、非常に貴重なものですね。」
「そうですね、特に一番最初の、初期のころに作られていったものということで、とても動きとしてはシンプルなものになりますので、これからも大切に守ってまいりたいなと思っております。また、仏教が科学であったということの証拠でもありますので、非常にロマンを感じるところがあります。」