6.診察室を訪ねて
(清水歴史探訪より)
待合室を出ると、廊下の先に診察室があります。
「こちらが診察室です。」
「ここはまた雰囲気が全然違うお部屋ですね。」
「そうですね、完全に洋風で。」
「それで、全部ガラスで明るくて、治療室に向いてますよね。」
「3つあったようですね。それで、この先生は東京歯科大学を出られたので、後輩の育成にもあたったようです。学生さんが卒業すると、ある程度ここで勉強させて、それからお家(うち)なりどこかに出してやって。」
「じゃあ、ここで勉強した歯医者さんも何人もいらっしゃったわけですね。」
「いるかもしれませんね。」
「床も、これ昔のままなんですね。」
「これは昔のままじゃなくて、直してます。」
「昔はこの床はどうだったんですか。」
「リノリウム(注)が張られていました。」
「ここのお部屋は、窓が大きくなってますね。」
「そうですね、明るい治療室っていいじゃないですか。」
「はい。」
(注)リノリウムとは、天然素材の床仕上げ材の一つ。亜麻と呼ばれる植物の種から取る亜麻仁油、松ヤニ(ロジン)などの樹脂類、コルク粉、顔料などを混ぜて、シート状やタイル状にしたもの。適度な弾力性があり、抗菌性能に優れている。天然素材で抗菌効果を持ち、焼却しても有害物質が排出されない環境に優しい素材として、またシックハウス症候群対策としてもリノリウムが見直されいる。
(清水歴史探訪より)
2階からは、先ほどの庭にあった蔵の向こう側の建物が見えています。
「赤い屋根。蔵と蔵の間に見える赤い屋根。宿泊室として使われてたんだと思います。大正3年というと、東海道線がそんなにたくさん動いていない。治療に遠くから来たお客さんがあそこへ宿泊して治療を受けていった、という部屋なんですよ。『宿泊施設』といっているんです。(笑い)」
「泊りがけで歯の治療なわけですね。」
「そうなんですよ。」
昔は虫歯の治療に通うのも大変なことだったようです。
蔵と蔵の間の赤い屋根
宿泊施設として使われていた
赤い屋根の建物
近くで撮った宿泊施設の建物