3.エレーヌのメモリアルコーナー
(清水歴史探訪より)
エレーヌ・ジュグラリス夫人に関する資料は、清水区にある静岡市立清水中央図書館の一角に展示されています。静岡市文化振興課の斉藤亜樹(あき)さんにご案内頂きました。
「こちらは平成4年の図書館の開館の時に合わせまして、メモリアルコーナーということで、ご遺族の方から頂いた物を中心に作らせて頂いたものになります。」
「お守り袋のような物がありますね」
「ご主人のマルセイさんが清水の方にいらした時に、お持ちいただいた遺髪の入った袋になります。三保に造られましたエレーヌさんの碑、羽衣の碑の中にも納められているんですけれども、一部がこちらにも展示ということで、お分け頂いた物が入っております。」
「和服が展示されています。」
「能『羽衣』を演じる時に、一番上に纏(まと)われていた衣装になりまして、写真やいろんな資料を見ながら、自分で布から縫って絵も自分でお書きになって作られた衣装ということで、すごい苦労の跡がわかると思います。ご本人が最後までこちらを纏(まと)って舞われてたと伺っております。」
「古い感じの(能)面があります。」
「こちらが実際に、先ほどの衣装と共に舞台で使われていた能面になります。どなたが作ったかははっきりしませんで、江戸時代の中期頃の作ではないかと言われております。最後の舞台の時もこちらをおつけになってらっしゃったと伺っております。羽衣の役を演じて、天女が天に帰っていく、その舞台のまさに最後の部分で倒れられたと伺っております。」
「古いレコードと楽譜があります。」
「これ、レコードの方は日本の宝生九朗さんの録音ということで、お隣にある楽譜はこうしたレコードや色々な資料を基にエレーヌ夫人が作られた能の楽譜になります。耳で聞いてこうした形で起こされて色んな字で書き込みが入ってると思うんですけれども、ご主人のマルセイさんですとか、他にもいろんな通訳の方等の大勢の手が入って、皆さんが試行錯誤をして、この羽衣という作品を作られていった様子がわかる、大変貴重な物です。少しでも日本の物を、能に近い物を一生懸命求められた、という品々ばかりだと思います。」