4.一階に下りてきました
(清水歴史探訪より)
「旅籠の『和泉屋』だった建物なんですけれども、今は『お休み処』ということで、皆さんの活動に使われてるということなんですね。」
「はい、駿河裂織(さきおり)倶楽部がここを管理して、もう一日中やっております。色んな織り、それから織りに限らず、昔からあった染め、おばあちゃん達がやったのを、伝承していきたいと思いまして、古き良き時代の物を再現しております。」
写真は、二階から一階へ階段を下りていく所です。
「今、あの、ここに色々展示してあるものがありますが、これはどんな物があるんですか?」
「これは、あの裂織(さきおり)という言葉は綺麗ですが、昔はぼろ織りとかぼっこ織り、と言っていまして、ぼろほど綺麗に織れます。ですから見てますと、裾裏(そでうら)で、汚い布ですけれども、実際には綺麗に織れてますし、バックですとか、汚いものが、綺麗になるという喜びですね、その生活用品を織っております。」
「今、リユースとかリサイクルとか言われておりますけど、それと同じことですか?」
「全くそうでございますね。それこそ、ほんとに捨てるようなものが綺麗になりますので、全くその通りでございますね。」
「元になるものっていうものは、どんな布地を使うんですか。」
「現在では、布団のシーツですとか、そのようなものがございますが、皆さん着物がいらないとおっしゃって、良い着物を裂いてしまって、あまり良い物を裂いてしまうと、私は文化遺産を壊してしまっていると思うのですが、ボロほど綺麗になりますので、家の中のいらないもの、そういうものを裂いたら、いいと思います。」
「どんなものが、できてくるのでしょう?」
「バッグですとか、それこそ大きかったら、コートですとか。もちろん、タペストリー(日本でいう掛け軸のような物)なんかも織りますが。やはり、普段使うベストですとか、そういったものが、案外喜ばれておりますので、そういうものを心掛けております。そして一つ、特徴は駿河裂織というのは、ぼろを基準にしておりますので、ぼろというのは途中で切れてしまうのです。なので、細い毛糸とかシルクの糸とかを、一本入れて織るという特徴があります。」
「裂織(さきおり)というそういう技術というのは、昔からあるんですか。」
「はい、おばあさんたちが、山の方で皆織っておりました。別に珍しいものではなく、価値の低いものだと思っておりました。ですが、たまたまスウェーデンに行った時に掛けてある(織物が)素晴らしく、美術館にあるようだと思ったのが最初でございます。こんなに価値のあるものだと思ったのが、外国に行って初めてわかりました。昔から裂織は自分の家のお孫さんとか家族の者、お正月がきたらこれを着せようとか、そういった思いで織っていたようですね。若い方にも伝承していきたいな、と思っておりますので、見るだけでもいいから見に来て欲しいし、やって欲しいし、続けていきたいと思っております。」
「江戸時代の建物にいらっしゃる気持ちというのは、どんな感じなのでしょうか?」
「不便かと思ったんですね、テレビはないし、冷暖房効きませんし、でもいると、すごくなんとなく落ち着くといいますか。古き良き時代の物を思い出したりします。全体がそういった雰囲気なのでしょうか。小さいお子さんが来た時にも、ここは良いって声を聴きます。やはりなんとなく落ち着く場所なのではないかと思いますね。昔の良き時代の物だと思いますけれども。」
「この良さが残ってくれるといいですね。」
「そうですね、是非おいでください。このお部屋に入るとわかると思います。」
安政の大地震(おおじしん)にも耐えた国登録、有形文化財の旧『和泉屋』。街道を行くたくさんの人々がここに一夜の宿(やど)を求めました。そしてここには、当時の人々の暮らしや生活の知恵が今も息づいていました。
(写真) 持ってみたらすごく重たかったです。
東西の様々な文化が行き交ったこの場所は、平成の現在、『お休み処』として地域の文化を育み続けています。
お話は駿河裂織(さきおり)倶楽部理事長の朝原智子さんでした。
(写真) 最後に記念撮影です。
『お休み処』は、JR新蒲原駅から徒歩5分、月曜日と祝日の翌日、年末年始を除き、一般に公開されています。
清水歴史探訪
お相手は石井秀幸でした。
この番組は、さつき通り沿い、JR清水駅近くの『いそべ会計』がお送りしました。『いそべ会計』について、詳しくはホームページをご覧ください。