3.二階の調度品を拝見させていただきました
(清水歴史探訪より)
「はい、これはよく皆さんが船箪笥(ふなだんす)ですか、とおっしゃるんですが、船箪笥(ふなだんす)とは違いますけれども、主に、富士川から興津川ぐらいの間にあった箪笥のようです。」
「この地域独特の…。」
「みたいですね。右側の小さいあれは、からくりで中にへそくりを入れたり貴重品を入れたりしたんでしょうね。あちらにも、もう一つ、開くのがありますので見てみましょうか。」
「こちらもずいぶん年代物で…やはり江戸時代くらいの。」
「そうですね、これを下さった方が90いくつかのおじいちゃんなんですが、『子供時代からあったからわからない』と言われまして。」
「では100年以上も経ってるかもしれないわけですね。これは高さが1メートルくらいありまして、これは二段積んであるんですね。上の方が両開き、観音開き…。」
「これは鍵を一つ開けまして、家財の鍵が開きます。もう一つ開けます。で、やっとこちらが開きますが、真ん中にあります。これが開かないんです。これ、ぐるぐる回して、やっとこれで開くんですね。」
・・・・鍵の音・・・・鍵の音・・・・
「では二重、三重になってるんですね。」
「そうですね、防犯になっているんですね。」
「単に鍵を開けただけじゃだめで、鍵を開けた後、二つのからくりを動かし、右側の観音開きだけ開けた後、さらに中のからくりを動かすと、左側も開くと。」
「もう一つ引き出しが、あるんですが…。」
「引き出しが出てきて、その奥からもう一つ出てきました。隠してあるんですね。職人さんの色んな工夫が、あったんでしょうね…どんなものが、入っていたんですか?」
「お宝ではないですよ。お金が入っていれば、音がしますからね。」
「引戸の所が、動くんですけれども、これ手を放して、下へ落ちると…音がするんですね。静かに開けることができない…わざと…。」
「だから、この箪笥は貴重品を入れた箪笥だと思うんですね。」
「外側のこの留め金といいますか…これも頑丈ですよね。まるで鎧戸のように。」
「細かい彫刻が入っているんですよ。箪笥の真ん中には家紋が入ってます。ちょっとこれ見難(みにく)いかもしれません。」
「両側合わせますと…。」
「家紋が入っているんですね。」
「家紋がついているということは、その家を代表する何かが、入っていたという…。」
「みんなお宅の家紋が、入っていますからね。」
「ご覧になった人は、皆さん驚かれるでしょうね」
「そうですね、皆さんこんなのあったら、欲しいとおっしゃいますね。」
「箪笥の他にも、なにか機械のようなものがありますが…。」
「昔、蒲原では御蚕(おかいこ)さんを飼ってたようですよ。その時に、これは糸を繰る道具なんですが、他にも下には、御蚕さんを入れた籠ですとか、残っていますが。おそらく昔はそれを売っていたんですね、糸を。ですから、物はなにも残っていないんですが、道具は、今でもしっかりできていますので、残っているんですね。」
「では昔の蒲原の産業の遺産ということでしょうか?」
「そうですね、昔はどこのお宅も、御蚕さん飼っていたとおっしゃるんですよね。」
「ちょうど厚い板の上に十字になるような感じで、これは糸をかける部分なんでしょうかね?」
「そうですね。」
「折ぎ板(へぎいた)のような形で、クロスするような形になっていまして、それをハンドルが付いていて、歯車の1,2,3,4つ組み合わせて回すように…全部木でできてるんですね。糸を巻くための機械なわけですね。」
「伺うところによると、お鍋に繭玉を入れて煮るわけですよね。それを何本か取ってきて、糸にして繰るそうです。」
「これ、今も動かすことはできるんですか?」
「できますよ、どうぞ。」
「ではちょっと回してみたいと思いますが、どんな音がするか…。」
ギギー・・・ギギー・・・ギギー・・・
「あ、今でも立派に…。」
「すごい精密ですよ。これは。」
「そうですね、この歯車がしっかり回りますね。」
「すごく楽でしょ、回してて。」
「ええ、力がかかりません。」
「すごく良い物だと思います。」
「油が差してあるわけでは、ないと思うんですが…。」
「刺してありませんので、たくさん歯車があるから、綺麗に回っているんですよね。」
「これで糸を繰っていたと…いうわけなんですね。糸を繰った後の、その機織り機はあるんですか?」
「はい、ございます。今、下にあるのは、明治の機でございますけど、やはりこの辺は、蒲原は、昔からおばあちゃん達が織ってましたので、その機(はた)がございます。」
「この二階にあるのは、新しく…。」
「これは、現在のスウェーデンの大きな機(はた)ですけれども、私達の倶楽部で物を作るときに、これで織ります。」
「かなり体力を使うんですか。」
「性能が良い物ですから、昔の機(はた)とは違いまして、楽に足で踏めますから、楽ですね。」
((機を織る音))
スウェーデン製という機織り機ですが、昔話の世界に誘われそうな懐かしい響きです。
((機を織る音))
最後に、二階にあるもので気になった物を写しました。