2.二階に案内されて
(清水歴史探訪より)
二階には、さらに様々な驚きがありました。
「二階まで上がってきましたけれども、ちょうど人一人が通るのがやっとというちょっと狭い階段ですね。」
「そうですね。ここを見てください。窓、外側が元々の窓です。これは、安政の時に残ったお宅だものですからそれが全部残ってます。こんなに揺れたわけですよね。」
「ちょっと斜めになってますよね。これは地震の影響で斜めになったのをそのまま…ちょうど壁のところの上にある普通のいわゆる窓枠の部分と、本来の窓枠の部分が大分ずれてますよね…。」
写真は、安政地震の影響で斜めになった窓枠です。
「そうですね。皆さんおしゃれにデザインですか?と聞かれるのですが、そうじゃない、地震の後遺症なんですよ、って説明するんですけれども。中心も曲がってるんですね。」
「天井とこの梁の部分も右と左で高さが違ってますね。」
「あの、これが残ってるのは、ここだけだと思いますけれどもね。」
「ここ今、二間(ふたま)ありますけれども、ここは通常はどう使われていたお部屋なんですか?」
「やはりお客様をお泊めして、突き当りのところはくし型の手摺ですけれど、やはりここは良いお部屋と思いますね。」
「では、そのひし形の手摺のところ、拝見したいと思うのですが、今、一番これが道路側の所ですね。道路の所へ、今でいうベランダのような縁側のような…。」
「このベランダのようなものは、本来出る所ではなくて、前に本陣様、偉い方が、泊まった時に、上から覗いてはいけない、下から座って見ましょう、という。そしてこのくし型のこれが、ちょうど影になって見えるという位置なんですよね。」
「偉い人を直接見ちゃいけないための目隠しみたいな…役割なんですか。そのためにくし型という形で、ちょうど縦に細い桟(さん)が通っている感じで。」
「そうですね。ちょうど良い具合ですけれども。ただここから見る左側の外の景色は曲がって賊が襲ってこない…そういった造りになってありますので。風情はありますね。当時の面影を思い出すような風情ですね。」
「あの、賊が襲ってこないように、曲がっているとは、どういうことなんですか?」
「真っ直ぐ来ちゃいますと、わーときちゃいますので、あんまり真っ直ぐな道は作らないっていう。」
「街道そのものが曲がっていると…それがここから見えるわけですね。…ちょっと見てみると、どんな感じなんでしょうか…確かに窓からすぐ外…東京方面、江戸方面を見てみますと右へ曲がって、左へ曲がってという感じになっていますね。これがわざわざこういう風に曲がった道を作って…」。
「上の手へ来るんですよね。」
「これが町の防御の…。」
「そうですね。すごく風情があって、当時はこんなだったかな、と思いますけどね。」
「ちょうど、私が今外を見るために立っているのが、板の縁側のような形になっていますが、ほんとはここは立ってはいけない…立つと御手打ちになってしまうという…。」
「今は大丈夫ですので…どうぞ。」
「立てるわけなんですけれども、そんな場所が今も残っているわけなんですけれども。さて、お部屋の中に戻ってきましたが、かなり古い調度品が残っていますね。」