「こんにちは。もともとはどういったお宅だったところなんですか。」
「歯医者さんなんですよね。大正3年から歯医者さんをやっているお宅なんですけれども、今は静岡市の持ち物ですね」
「今はNPOの皆さんが管理してらっしゃるわけですね。」
「そうですね、はい。」
「この建物なんですけれども、この蒲原地区の中でちょっと変わった外観のようなんですが。」
「今、町家造りというお話がありまして、通り土間という言葉も出てきましたけれども、まっすぐ廊下が裏の方までつながっているんですが、この構造なんですか。」
(清水歴史探訪より)
「そうですね、この廊下が土間だったというのが分かるところがあるんですが、ここに鴨居があった跡があるんです。」
「あっ、柱のところにふさいだ跡がありますね。ずいぶん低い位置。」
「そうですね。だからこれが廊下をとっちゃうと、土間になっていますので、土間から計ってこれがちょうどいい高さ。」
「この通り土間というのは、外からどんどん人が通っていたとお話を伺ったことがありますが。」
「そうなんですよね。でも人が入るのは店の間まで。ちょっと親しくなると中の間まで、奥へ行くほど私的な空間になるんです。初めての人は店の間ぐらいで『ごめんください』と入れないんですよね。でもちょっと親しくなると、中の間まできて『いる?』っていうようになるんですよね。」
「はい。今は通り土間のところは廊下になっていますけれども、そこから一段上がって、まず座敷ですね。」
「はい、店の間です、これ。店の間というのは、街道に面して一番最初のお部屋が店の間です。」
「お店の『店』という字を書くようなんですが。」
「そうです。だから昔は商売やってる家や、この裏で物を売ったりとかっていう家もあるし、店の間というんですよね。」
「ここは6畳間ぐらいの大きさなんでしょうか。」
「そうですね、6畳間ですね。」
「床の間もあるようですね。」
「ありますね。店の間の見どころというと、やっぱり天井ですね。これ『格(ごう)天井』といって、お寺さんによく見られる天井ですね。格子の天井、『格天井』。そしてこの戸棚のこれ、『杉板の浮造り』といいます。こすると木目が浮き出る、だから『杉板の浮造り』っていう、『浮く』っていう字を書きますね。」
「木目がきれいですね。」
「きれいです。だから、杉板をこすっていくと、こういう木目が出てくるよ、ということですね。」