1.序(明治19年:11歳)
2.明治その1 ハワイ(明治24年:16歳):16歳の春
一方、16歳のけんは軍艦天城の海軍少尉、小笠原長生に初恋。
3.明治その2 駆け落ち(明治25年:17歳):17歳の春
江尻志茂町(しもちょう)の遊郭、千畳楼(せんじょうろう)の女将(おかみ)のまつは次郎長の姪で、養女でもある。おちょうとは母娘の間柄であるが仲が良くない。まつにかぎらず次郎長の親族はおちょうをこころよく思っていない。
けんが千畳楼から出てきたところで、初志郎と出会う。初志郎はけんに女を匿って欲しいと頼み、急患と偽って植木先生の診察室に連れて行かせる。その後、けんは、初志郎を次郎長にわびさせる。
一方、女の追っ手が植木先生を襲い、先生は怪我を負ってしまう。しかし、女は天井裏に逃げて無事だった。女は『およう』といい初志郎と駆け落ちして来たのだった。
次郎長は、初志郎とおようとの縁を切らせて、横浜におもむき話をつける。
その結果、おようは末廣を出て江尻の髪結い床で働くようになり、植木先生の家に出入りするようになる。
春の彼岸、けんはおちょう、はると三人で梅陰寺へ墓参へ。萬休(ばんきゅう)和尚とはるが席をはずした時に、おちょうはけんに縁談の話を始める。実はこの時、けんは植木先生に恋心を感じていたのである。縁談の相手はなんと初志郎であった。
翌日、出家して天田愚庵(ぐあん)となった天田五郎が末廣へ。天田五郎は磐城出身で山岡鉄舟により次郎長に預けられ、その後、次郎長の養子になる。その時書いたのが『東海遊侠伝』である。その後、養子は解消。久しぶりの再会で、にぎやかな夕食。
一方、初志郎はすねて井戸端に。声をかけたけんに初志郎は「おめえと夫婦になると」と言ってくちびるをうばう。
けんは天田五郎に植木先生のことを話す。天田五郎は次郎長に話す。次郎長は、初志郎を一人前になったら山本家(次郎長)の戸籍に入れるつもりで富士へ行かす。
次郎長は、けんに植木先生の嫁に行くことを了承する。
5.明治その4 カラムシ(明治26年:18歳):18歳の夏
カラムシは、茎の皮からは衣類、紙、さらには漁網にまで利用できる丈夫な繊維が取れる多年草の植物である。
次郎長がカラムシ畑で農作業をしている時に、けんは千畳楼に使いに行った。帰り際、雨に会い、家に帰ったら次郎長が高熱を出して寝込んでいた。次郎長は、一時は平熱に戻ったものの安静にしていなかったためぶり返し、明治26年6月12日帰らぬ人となってしまった。日清戦争の前の年である。
次郎長の死ぬ前に戻って来た初志郎は、次郎長危篤を知らせなかったことを恨んでいるだけでなく、富士に行かされたのも厄介者払いと勘違いしていた。
清水に立ち寄った天野五郎が四国巡礼を提案し、秋にはおちょうと五郎は四国巡礼の旅に出ることが決まった。