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5.徳川慶喜公と追分羊かん
 
 徳川 慶喜(とくがわ よしのぶ)は、江戸幕府第15代征夷大将軍(在職:1867年 ‐ 1868年)。江戸幕府最後の将軍で征夷大将軍に任じられた最後の人物。
狩猟
弓道
サイクリング。
家臣はマラソン。
晩年の慶喜公
(清水歴史探訪より)
 
 さて、江戸末期から明治にかけての激動期。この清水にも日本の歴史を動かし、あるいは歴史に翻弄された人々がいました。その一人が、この『追分羊かん』にも足しげく通っていたようです。
 
 「さて、もう一つ、この店には貴重な物があるということなんですが、これはなんなんでしょうか?」
 
 「そうですね、今こうして私達が話している空間に床の間がありますよね。そしてこの間(ま)に『掛け軸』が掛っていていますね、。これがですね、明治10年ぐらいですね。十五代将軍、徳川慶喜(よしのぶ)さん。静岡では慶喜(けいき)さんと呼んでいますけれども、よくこのうちに来て下さって、そしてお茶を飲んで羊かんを食べて、うちの先祖(羊かん屋十一代当主府川佐太郎)とお話をして、しばらくしてお帰りになったと。その時にうちの先祖がお願いをして書いて頂いた物でありますから、これはうちの家宝であります。」
 
 「これはなんて書いてあるんでしょうか?」
 
「そうですね、これはですね一、二、三、四、五文字あって。静岡県の『静』、真ん中の『中』、観光の『観』、『物』、変化するの『化』、『静中観物化(せいちゅうかんぶっか)』と読みます。
 意味合いは、『静中(せいちゅう)』というのは『隠居をした静かな私の空間』という意味だそうです。
 『観物化(かんぶっか)』。『物化(ぶっか)』とは『なにか、物がどんどん変わっていくということ』だから、『明治時代が進んでいく』ということでしょう。『観(かん)』は『見えるとか、わかる』という意味です。
 だから『この隠居している静かな私の空間にも、明治時代がどんどん着実に進んでいくというのがわかります』と。
 それから隣に紀元2536年(皇紀2536年=西暦1876年)と書いてあるんですが、これは明治9年であります。
 徳川さんは、皇室のおかげで政治を担当させてもらって二百六十六年リーダーでやらせてもらったと、本当に感謝していると。そういう意味が紀元二千五百三十何年という表現に込められているそうです。」
 
 「徳川の最後の将軍であった慶喜(けいき)さんなんですけれども、この駿府に来てまさにその心境なわけですね。」
 
 「そうですね、徳川さんは明治の初めから明治30年くらいまで静岡にいたそうであります。
 それで、東京の方で徳川さんに、東京にお帰り頂きたいという声が多くて。それで、それから東京にお帰りになるんだけれども、お亡くなりになったのが大正2年くらいらしいです。
 今年、ちょうどお亡くなりになって100年とかということで、静岡市立美術館、静岡駅の前にあるあの美術館ですね、あそこでもって遺品展をやるそうです。
 その時にこの掛け軸を出してもらえませんかとお話がありまして、そのつもりでおります。
 この『静中観物化』ていうのは、徳川さんが残した他の掛け軸の中に、例えば、名前が書いてあってその下にハンコなんかが打ってあるわけですが、そのハンコに刻んである言葉だそうです。
 だから徳川さんはこの『静中観物化』という言葉が、お好きだったのだろうと、学芸員の方は言っておられました。ハンコでなくて、こうして生の字を見たのは初めてだとおっしゃっておりました。」
 
 「そういう点でも貴重だと思うんですけれども、またこの書いてある材質というのも違う物だそうですね。」
 
 「そうですね、これはねツルツルした布だから絹であります。子供の時には、これは大切な物で子供は近寄っちゃいけないよ、と。これは大切な物だと。
 ということでもって、すごしたんですけれども、段々自分がこの掛け軸を触ってもよい年齢になって、よくよく見たら、紙じゃなくてツルツルした布だから、なんて徳川さんは心の広い、温かい、優しい思いやりの人だろうと思ったわけです。
 今でも絹に字を書いて差し上げるといったら、絹自体が高いだろうし、とても丁寧な対応だと思います。」
 
 「展覧会の方は秋ということですけども、この辺りも楽しみですね。」
 
 「そうですね、楽しみです。」
 
 
 旅人の目印となり、また旅の安全を祈った追分の道標(みちしるべ)。時は流れて、街道を行く交通手段は徒歩から馬、そして鉄道や自動車へと変わりました。この地の東海道も、東西交通の主役の座は新しい国道や高速道路に譲りました。しかし、志ミづ道(清水道)の入口を示す石の道標(みちしるべ)は昔と変わらず、行き交う人々の傍らで静かに佇んでいます。
 
 お話は、『追分羊かん』の十五代目、代表取締役の府川充宏さんでした。
 
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税理士法人森田いそべ会計
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代表 森田行泰
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